信州木曽のねこ

UPDATED 2020.01.16

こんにちは。
はじめまして。椿井木工舎の衣・食(生産、畑、食べる)担当の妻です。
ブログでは、はじめましてになります。

みなさん「信州のねこ」って知っていますが?
キャットの猫ではなくて、衣の「ねこ」です。

私たちが住んでいる木曽谷では、秋から冬、春先まで、ねこを背負います。
今でも木曽谷では、漬物をつける時期になると、ねこの季節がはじまります。


「ねこ」とは、厳しい信州木曽の冬を過ごすための防寒着。
養蚕農家に伝わる袖なしの半纏だったといわれています。

家でも、野良仕事でも、お出かけにも、そして寝るときにもねこ。いつもねこが背中をあたためてくれます。

ねこは、着物を一枚一枚丁寧にほどき、洗い直して、手縫い(和裁)で仕立てられております。
背中には、真綿、もめん綿が一枚ずつ入っていて、薄くて軽いのにとても暖かい防寒着です。真綿は、お蚕さんの繭からつくる繊維のことで、繭から紡いだ糸でつくる織物が絹になります。

ねこの生地は、絹、毛、木綿の天然素材の古布。今ある布を大切に使うという仕事で、布を継ぎ足しなどして丁寧に縫っていきます。

昔、養蚕が盛んであった信州。

木曽谷では、養蚕民家がいまでも残っています。養蚕農家の女性は、出荷できなかった繭で真綿をつくり、着物をほどいた古布と、中入れ綿をつかい、ねこをひと針ひと針家族のために縫っていました。地域、つくり手によって少しずつ異なる「ねこ」は、家族のかたちでした。

ものが簡単に手に入らなかった時代、木曽暮らしの中から生まれた生活の知恵が今でも続いています。

私たちが住む町は、昔は林業でとても栄えた町。木材を運ぶための森林鉄道(林鉄)が走っていました。今は人口4200人の小さな町ですが、昔は映画館があったそう。

呉服屋さんもいくつかあり、高価な着物を着ている方が多かったと聞きました。
町の方から「ねこ」に、といただく着物は、とてもすばらしいものが多く、その昔、町が栄えていたという証だと思います。

ねこの魅力にはまって、一年前からねこづくりをはじめました。私のねこの師匠は、町の可愛らしいおばあちゃま。
不思議なことに町の方々の着物が師匠の元に集まってきます。師匠はいただいた着物でねこをつくり、持ち主に「ねこがえし」をしています。。

私のねこづくりは、はじまったばかりです。「ねこがえし」ができるよう、続けていきたいと思います。

今回、信州木曽谷から飛び出して、師匠のねこと一緒に京都の恵文社さんの企画展に参加させていただけることになりました。

山鳩舎のみやぎちかさんに、描いていただいた”ねこ”です。
寒い木曽の冬を、背中から温めてくれるあたたかさが伝わってきます。

お手伝いさせていただいている、上松町特産品開発センターの吉野かぶの漬物と、えごまだれ(五平餅のたれ)えごまドレッシングも一緒に並ぶことになりました。京都の皆さんに、木曽の漬物が受け入れてもらえるかとても楽しみです。

寒い冬の信州から、暖かい便りをお届けします。
京都の皆様、背中をあたためにまいります。

展示は今週末、18日から2週間。
皆さま、よろしくおねがいします。

文・写真 二宮美香